【熱血フォアハンド塾】フォアのテイクバックを小さくとアドバイスされてイップスになった男性の話

熱血フォアハンド塾

コーチは皆さんのテニスの上達に一生懸命です。



しかしコーチが一生懸命であるが故に、「皆さんが逆に上手くいかなくなる事もあります」





今回は、アドバイスが全くハマらずフォアがイップス気味になるところまで陥ってしまった事例を紹介します。





まず、その男性の基本情報です。



男性は年齢40代前半、左利き、テニス歴も20年以上、学生時代から硬式テニスをされています。

モチベーションも高く、体型も維持され、非常に健康的な男性です。

プレースタイルは、大きくダイナミックなフォームのサーブとフォアを武器に攻めていくイメージです。



まぁ、ワタベの大好物なテニスプレーヤーです。

「テイクバックを小さく」でフォアがイップス気味に

とある事情でワタベが長い期間レッスンを休んでいる間に、3人の違うコーチに「全く同じアドバイス」を貰ったそうです。



「テイクバックを小さくしてください」



しかしその結果、「振り切り方が分からなくなった」そうです。





このようなアドバイスはよく耳にします。



例えば。



日本のジュニアが海外を転戦し始めた際に、外国人の段違いに跳ねるストロークや、200キロを超えるサーブ、そしてボールの減速が少ないハードコートに対応する為に「テイクバックを小さく」するそうです。





とまぁテイクバックを小さくする事自体にメリットは沢山あります。



しかし彼はこのアドバイスでフォアがイップス気味になってしまった事実があります。





では考えてみましょう。



「このアドバイスは彼に必要だったのでしょうか?」





いや、要らなかったと思います。





もちろん、初心者や初級者であれば少し話は違ってくるでしょう。



しかし、テニス歴20年以上の上級者に対して今回のようなアドバイスは「レベルの低いアドバイス」だったと断言出来ます。それには大きく2つの理由があります。

このアドバイスが要らない2つの理由

理由1:フォアのバランスが崩れる

私たちは、骨格、筋力、感覚、経験、そして運動連鎖、これら全てを総動員させて一つのフォームが出来上がります。



私達のフォームは繊細なバランスの上に成り立っているのです。





そうなのです。皆さんは大きな勘違いをしています。



「力を上手く伝える為の運動連鎖が先で、その人に合うフォームが勝手に出来上がるのです」





だから先にフォームを教えてしまうと
・本人にとって合わない可能性がある
・それまでと全く違うパワーの出力方法が必要になる
・タイミングの取り方が変わる



その為、フォアの振り方が分からなくなるのです。



特に彼の様な経験者にフォームのアドバイスはメチャクチャ危険です。





あと、これも大事です。



彼は既に出来ているんです。





例を挙げると、先日、惜しまれながら引退しましたが、デルポトロ選手とか見てください。



めちゃめちゃテイクバックは大きいですよ。



ですが、世界レベルでも類を見ないほどの「巨大なフォアを何も問題なく打ってますよ」





問題無ければ、変える必要が無い。



これ、むっちゃ大事です。

理由2:そもそも必要な環境にいない

確かに大きなテイクバックは速いボールに対して遅れがちですし、ヒットするタイミング取りが難しいのは認めます。





でも要りますか? そのアドバイス?



だって、そんな200キロのサーブとか来ないでしょ? 

そんなレベルの高い試合に出ますか?

週末プレーヤーに世界で戦うフォームが必要ですか?





分かります。



そのアドバイスが正しい事は。



そして、世界への扉を開くカギの一つである事も認めます。





けど、要らないと思うなぁ。



改良のリスク&ベネフィットの割が合わないし、改良する時間も圧倒的に足りないし、そもそもちゃんと出来てますから。

フォアの調子を崩した具体的な理由

【混乱】が、この男性がフォアの調子を崩した元の原因です。



混乱は、自分にとって合い且つ慣れ親しんだやり方ではなく、大きく違うやり方を押し付けられた事によって起きました。



そして違うやり方を律儀に試して、パワーの出力方法が変わりました。



しかしその方法に慣れておらずパワー不足になり、振り切るだけのスイングスピードが足りなくなりました。





そう。



「【振り切り】=【フォロースルー】の為のスイングスピード不足が調子の悪いフォアの理由です」





フォアハンドは、ボールに当たってからのフォロースルーが超重要です。



フォロースルーでボールをコントロールします。逆にラケットにボールが当たってすぐ持ち上げると、カスカス当たりになったり、ガシャったり、思ったようなコントロールが出来なくなります。





そして、彼は自信を失いました。





そりゃそうです。やり方が分からないから自信なんか出ませんよ。



必要なパワーの出力方法が分からなければ自信を持って打てないし、結果も伴わないからもっと自信を無くします。





この【自信喪失】もフォアの調子を崩したもう一つの理由です。

処方箋とその後と最後に

彼に対する処方箋は非常にシンプルでした。



「元に戻してください」





以上です。今では楽しそうにフォアでボールをしばいてます。





運動において、自分のスタイルを見出す事が重要です。それは自分の中に眠るオリジナルであり、人から押し付けられるモノでは無く、本人の骨格、筋力、感覚、経験を元に運動連鎖を行えば自動的に生まれるものです。





その為、

フォーム変更は自分オリジナルをベースとし、基本はマイナーチェンジがおススメ。

「テイクバックを小さくする」行為は打ち方の根本が変わるメジャーチェンジであり、先述の通り結構危険な行為です。





メジャーチェンジを完全に【悪】とは言いません。



しかし、そのメジャーチェンジに触れるようなアドバイスをコーチはすべきなのか?

受け取る側も、メジャーチェンジに触れるようなアドバイスを真摯に受け止めるべきなのか?





どちらにせよ「よく考えましょう」ですが、簡単にイジっていいようなものでは無い事は確かです。

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